スマホで手軽に!シックスハット法をテキストで実践するアイデア整理・共有術
グループワークで新しいアイデアを考えたり、課題の解決策を検討したりする際、なかなか意見がまとまらない、一部の意見に偏ってしまう、発言しにくい雰囲気があるといった課題を感じることはありませんでしょうか。特に、限られた時間の中で効率的に多様な視点からの意見を出し合い、それらを整理・共有することは容易ではありません。
このような状況を改善し、よりスムーズにアイデアを多角的に検討する方法として、「シックスハット法」という思考フレームワークがあります。これは、6つの異なる色の「帽子(ハット)」をかぶったつもりで、それぞれの色に対応した特定の視点から考えや意見を述べることで、意図的に多様な視点を取り入れようとするものです。通常、議論の中で発言が混ざりがちですが、ハットの色ごとに視点を分けることで、論理的に議論を進めることができます。
「絵を描かなくても簡単にアイデアを整理・共有する」をコンセプトとするこのサイトでは、このシックスハット法を、絵や複雑なツールを使わずに、テキスト入力だけで手軽に実践し、アイデアを整理・共有する方法をご紹介します。特に、スマートフォンでの操作に慣れている大学生の方々が、グループワークで活用することを想定しています。
絵を描かないテキスト中心のシックスハット法とは
シックスハット法は、以下の6つの視点(ハット)を使って思考を進めます。
- 白のハット: 客観的な事実、データ、情報。感情や解釈を含まず、「今わかっていること」や「必要な情報」を述べます。
- 赤のハット: 感情、直感、感覚。好き嫌い、恐れ、希望など、論理的根拠のない感情的な反応を率直に表現します。
- 黒のハット: 批判、懸念、リスク。計画の欠点や問題点、なぜうまくいかないかを考えます。
- 黄のハット: 肯定、利点、機会。計画の良い点、メリット、楽観的な見通し、可能性を考えます。
- 緑のハット: 創造性、新しいアイデア。既存の枠にとらわれず、新しい発想や代替案を出します。
- 青のハット: プロセス、全体像の整理。議論の方向性を定めたり、これまでの意見をまとめたり、次のステップを考えたりします。議論の進行役のような役割です。
通常は会議形式で順番に発言していくことが多いですが、これをテキストベースで行うことで、以下のようなメリットが得られます。
- 手軽さ: 特別な道具や場所は不要で、インターネットにつながったスマートフォンやPCがあればどこでも実施可能です。
- 全員参加: 発言が苦手な人も、テキストであればじっくり考えて自分の意見を表明しやすくなります。
- 記録性: テキストはそのまま記録として残るため、後から見返したり整理したりするのが容易です。
- 非同期性: 同時に集まるのが難しい場合でも、各自が都合の良い時間にテキストを入力していくといった非同期での実施も可能です。
具体的な実践方法
シックスハット法をテキストで実践するためのツールとしては、以下のようなものが考えられます。いずれも無料で利用でき、スマートフォンでの操作がしやすいものです。
- 共同編集可能なドキュメント: GoogleドキュメントやWord Onlineなど。1つのドキュメント内にハットごとにセクションを作り、各自が自分の視点からの意見を書き込んでいく方法です。
- チャットツールのスレッド機能: SlackやDiscordなど。特定の議題に関するチャットで、ハットごとにスレッドを立てて意見を書き込んでいく方法です。絵文字やメンション機能も活用できます。
- オンライン付箋ツール: MiroやMuralなど(無料枠があるもの)。ハットごとにボード上のエリアを分け、テキストの付箋を貼り付けていく方法です。視覚的に意見が集まっていく様子が分かります。
- 簡易的なフォーム: Googleフォームなど。匿名性を保ちつつ、各ハットの質問項目に対して回答を集める方法です。集計がしやすい反面、リアルタイムでの議論には不向きです。
ここでは、共同編集可能なドキュメント(例: Googleドキュメント)を使った基本的な手順を紹介します。
- テーマ設定: グループで検討したいテーマや課題を具体的に設定します。
- ドキュメント準備: 共同編集可能な新しいドキュメントを作成し、参加者全員に共有します。ドキュメント内に、白、赤、黒、黄、緑、青の各ハットの項目(見出しなど)を作成しておきます。
- ルールの確認: 各ハットの意味と、今回はテキストで意見を書き込むことを共有します。ハットを切り替えるタイミング(例: 5分ごとにハットを変える、全員が書き終えたら次へ進むなど)や、書き込む際の注意点(例: 他の人の意見を批判しないなど)も決めます。
- 実践: 設定したハットの順番に従って、各ハットの項目に各自が考えたことをテキストで書き込んでいきます。
- 白のハット: 「〇〇に関するデータによると…」「現状は〜という事実があります」「この件について他にわかっていることは…」など、客観的な情報のみ。
- 赤のハット: 「このアイデアを聞いてワクワクします」「正直、少し不安を感じます」「直感的にこれは良さそうだと思った」など、感情や直感を率直に。
- 黒のハット: 「この計画には〇〇というリスクが考えられます」「予算が足りなくなる可能性があります」「〜という問題が発生するかもしれません」など、批判的、否定的な視点。
- 黄のハット: 「このアイデアが成功すれば〇〇というメリットがあります」「〜という可能性を秘めていると思います」「この点は非常に優れている」など、肯定的な視点。
- 緑のハット: 「全く新しい視点ですが、〜というのはどうでしょう」「これまでの意見とは違うのですが、こんなやり方もあるかもしれません」など、創造的、新しい発想。
- 青のハット: (進行役が担当することが多いですが、全員で考える場合も)「これまでの意見をまとめると、現状はこうで、リスクとメリットはこうですね」「次にどのハットで考えましょうか」「この議論から見えてきた論点は〇〇です」など、プロセスや整理に関する記述。
- 共有と整理: 全てのハットでのテキスト入力が終わったら、ドキュメントの内容を共有画面で見たり、各自で読んだりしながら、意見を整理したり、さらに議論を深めたりします。必要であれば、テキストにコメント機能で補足を入れることも可能です。
グループワークでの活用事例
- 新しいサークル活動の企画:
- 白:現在のサークルの状況、参加者のデータ、過去の活動内容
- 赤:新企画への期待、不安、楽しそうかどうか
- 黒:企画の実現可能性、予算、集客、リスク
- 黄:企画の魅力、メリット、成功した場合の効果
- 緑:斬新なアイデア、これまでにない活動内容
- 青:議論の進行、意見の整理、企画の方向性決定
- ゼミの課題解決:
- 白:課題に関する事実、データ、先行研究
- 赤:課題に対する個人的な感情、難しさ、興味
- 黒:解決策の問題点、実現の障壁、想定される失敗
- 黄:解決策の良い点、期待できる効果、成功の可能性
- 緑:既存の枠にとらわれない解決策、新しいアプローチ
- 青:議論の進行、課題の定義、解決策の評価、最終的な方向性決定
まとめ
シックスハット法を絵や複雑な図を使わず、テキスト入力だけで手軽に実践することで、グループワークにおけるアイデア出しや問題解決のプロセスを、より多角的かつ建設的に進めることができます。共同編集ドキュメントやチャットツールなど、日頃使い慣れているツールを活用すれば、新たな負担なく取り入れられます。
ぜひ、次のグループワークで、この「絵を描かない」テキストによるシックスハット法を試してみてはいかがでしょうか。多様な意見を引き出し、活発な議論を行うための一助となるはずです。